日本ビソー株式会社の外壁関連資料の一つとして建築の外壁写真パネル50点を制作した。
選んだ50の建築は、どれも日本とヨーロッパの19世紀後半から20世紀にかけての近代建築の発展の中で、興味深い外壁をつくり出した作品ばかりである。この50作品を見るだけでも、現代の建築の原点である近代建築、すなわちモダンな建築の外観や外壁のことが十分に理解できるだろう。そこでこのエッセイでは、制作した外壁写真を材料に、改めてモダンデザインという視点から近代の外壁を詳しくみていこうと思う。
ところで、建築の外壁デザインを鑑賞していく上での幾つかのポイントがある。
たとえば素材に着目してみるのはどうだろう。石やレンガや木、テラコッタやタイル、塗り壁やコンクリート、そして鉄やガラスといった多くの素材で、近代建築の外壁はつくられている。素材によっては、ある限られた時代や地域にのみ用いられたものがある。息の長く、かつ世界的な広がりの中で使われ続けているものもあるだろう。デザインを見ていく上で、それら時代性や地域、社会性に思いをはせることは、外壁に対しさらに深い理解をもたらせてくれはしないだろうか。
色彩に注目するのも良いかもしれない。というのも現代の、とりわけ超高層ビルの外壁は、巨大なガラス面による淡い水色か灰色という共通性を持っているが、その色彩感覚はいつ頃登場してきたのかを探ることができるからだ。少なくとも近代建築の外壁は、素材の多様性に基づく、このガラス色も含めた多くの色彩から成り立っていたのである。
そうした点をふまえて、50の建築の外壁デザインに関して、以下の13グループに分けてこれから考えていこうと思う。 |